2017年08月09日

MOVADOモバード     AMEKAJI×WATCH No.11

AMEKAJI×WATCH No.10

《MOVADO モバード》

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モバード デイトロン キャリバーPHC3019 / モバード トリプルカレンダー キャリバー475
1970年頃製造               1940年代製造

モバードはNo.10で紹介したユバーサルと同様に知名度こそ無いが、ある分野では世界一といえる素晴らしい時計メーカーである。
ある分野とは、ずばり自社製作である。モバードは全回転式自動巻、半回転式自動巻、クロノグラフ、ムーンフェイズ、角型ムーブメントとあらゆる腕時計を自社製作していた。
オメガ、ジャガールクルト、ローレックスは、クロノグラフを自社製作しておらず、ユニバーサルも角型の自社製ムーブメントは無い。モバードは全て自社製作である。

十数年前から特に時計雑誌が多く発売され、出版社が週刊誌の部門で本当は事実を伝えなければならないのに面白おかしくフィクション化して、売上増加を図っている。
その為に実のない名ばかりの腕時計が、人気がでてしまう。残念なことだ。

《MOVADO ワンプッシュクロノグラフ1940年代製造 キャリバー470》

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10角の特殊オープナーで開閉する裏蓋を使用した防水ケース、金色のブレゲ数字のツートーン文字盤など、スイスの古き良き伝統が感じられる。
ムーブメントも他メーカーのクロノグラフが実用性を重視して部品の仕上げをしていないのに対し、モバードは高級品として面取りや仕上げがしっかり施されている。

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《MOVADO クロノグラフ 1940年代製造キャリバー95M》

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60分積算計や赤い針を採用し、下のプッシュボタンがスタート、上のボタンが
リセットという機構は独自性を持つ自社製作の証しである。
ムーブメントに目を転じると、ブレゲヒゲの採用と面取り、高級仕様が施され外装と同様の独自性がいかんなく発揮されている。

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《MOVADO カレンドマチック 1950年頃製造 キャリバー228》

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キャリバー228は、トリプルデイト半回転式自動巻きである。半回転式自動巻きは、自動巻きムーブメント完成途上の過度的な存在ではあるが、それゆえに面白さも倍増する。
僕自身、No.4で紹介したように半回転式自動巻きが好みである。腕の上でゴロンゴロンあるいはコンコンとローターがバネに当たる音を感じて機械式腕時計をしている実感が涌いてくるし、楽しさを体験できる。

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カレンドマチックはトリプルデイト(日、曜日、月)で、特に優れているのは、
これまでは、日付が三十一日から一日に変わるときにプッシュボタンでいちいち月を変えなければならなかったのを自動的に月が変わるという画期的な、しかもコストがかかる仕様になっている。
他のメーカーではあまり採用されていない。ケース径32.7ミリの中に納まっているムーブメントなども完全自社製作の証しであると思う。

《MOVADO デイトロン自動巻きクロノグラフ1969年 キャリバーPHC3019》

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モバードの偉大さの中の一つがこのキャリバーPHC3019(自動巻きクロノグラフ)であると思う。
世界初の自動巻きクロノグラフはゼニス社と共同開発ではあるが、過去の実績からみてもモバードの主導で完成されたことは明白である。
手巻きクロノググフはすでに1940年代後半には完成の域に達していた。自動巻きは1950年代から本格化し60年代に完成の域に達した。
クロノグラフも自動巻きも腕時計の限られた空間を目いっぱい利用しているので、この二つをドッキングさせるのは並大抵の苦労ではなかっただろう。

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1940年〜1950年当時はいかに小さく、いかに精度がいい腕時計を作れるかという信念があったので、現在の腕時計みたいにケース径43ミリとか45ミリなどとバカでかい腕時計は考えられなかった。

クォーツの時計が発売されてから1970年代に行われた生産システムの合理化による新時代(現行品)のレベルダウンされたムーブメントでは、もはやこのムーブメントに匹敵する品質の良いものはどこのメーカーも作ることが出来なかった。今なお最高峰に君臨する名機である。
幸いなことにこのムーブメントはゼニス社より現在も作られ続けており、クロノメーター規格もクリアし、月齢(ムーンフェイズ)を付加させるなど、進歩を遂げている。

キャリバーPHC3019は、ゼニスではキャリバー「エルプリメロ」と称している。
時計の振動数は5振動/1秒か、5,5振動/1秒が耐久性、精度の最適であるのに対してPHC3019は、10振動/1秒であり、日本製は材質の面で摩耗がひどく耐久性に問題があったが、材質の優れたスイス製は摩耗の心配もなく、外からの影響を少なくする高振動の特徴が十分発揮されている。

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ゼニス キャリバーエルプリメロ(現行品)

話はそれるがムーブメント完成から、数十年後にローレックスが「エルプリメロ」をゼニス社からの供給を受けてデイトナの第二弾として自動巻きクロノグラフとして発売した。10振動を8振動に改良したとされているが、2振動下げたとしても耐久性にそんなに影響しないと思うし、10振動であれば10分の1の計測ができるのに8分の1と中途半端な計測しか出来ない。
なにより当時ゼニスの「エルプリメロ」が30万円だったのにデイトナはその3倍もした。
名前が先行しているせいであろうか・・・同じムーブメントでも名があまり知られていないモバードは名前より実力が先行していると思う。

現在のピラーホイールを使わない簡略化されて垂直クラッチ方式の高額クロノグラフは、経年劣化でアッセンブリーを交換しなくてはならないが、要であるピラーホイールを使用した伝統的な水平クラッチは、良い職人の手にかかれば調整が可能であり長期間の使用にも耐えられる。

スイス機械式時計の全盛期に製造されたモバードの腕時計を超えることは、名ばかりを売る現在の時計では100パーセント不可能である。


          写真提供:太安堂本店
          参考文献:機械式時計の名品:栗崎賢一
          構成・文:YASUO   編集:沖津雄斗  
posted by Amekaji-fan STAFF | AMEKAJI x WATCH